【パニック障害体験記③】デパスとの出会い

体験記 パニック障害体験記

徐々に出来ないことが増えていく恐怖

パチスロ屋で生涯3回目となるパニック発作に襲われてから、僕の生活はどんどん変わっていきました。

なんとか気にしないようにしようと頑張ってはいたのですが、そんな頑張りも虚しくパニック発作の弊害に苦しめられるようになっていきます。
今まで普通にできていたことが、まともにできなくなってしまうのです。

 

まず最初に出来なくなったのは、パチスロ屋へ入ること。

いや、入ることはなんとかできるのですが、座ることが無理。
これを打とう、と思って座ってみても、お金を入れようとした瞬間から動悸が始まります。
「またあの発作がくるのではないか?」という不安、いわゆる予期不安が始まってしまい、パニック発作の前兆となる軽い動機や吐き気に襲われるのです。

とても普通に打っていられる状態ではないため、結局はすぐに席を立ち退店するハメに・・・・

とにかく、連チャンが怖いんですよね。
当時のパチスロには、一度当たるといつまで続くかわからない、といった類の役が多かったため、初当たりの時点で異常な緊張に包まれてしまいます。

そして、せっかく当たったのに、「続くな・・・・ 続くな・・・・」と祈ってしまうのです。

本来パチンコ・パチスロで一番楽しいはずの連チャンが、苦痛で苦痛で仕方が無いというおかしな現象。。。

結局、あの3回目の発作以来まともに打つことはなくなりました。
これにより、生活費・家賃を稼ぐ重要な収入源が、一つ断たれてしまったのです。

 

電車に乗ることも再び苦痛になってきました。

ドアが閉まった瞬間から、どう足掻こうと次の駅に停車するまでは乗っていなくてはいけない、という物理的拘束に恐怖を感じてしまうのです。
「電車が走り出してからあの発作がきたらどうしよう・・・・・」と。

パニック発作で死んでしまうことなど絶対にないのですが、それでも発作の最中は本当に死んでしまうのではないかと思うくらい苦しい状態。
そんな発作が、自由の利かない空間で起こったりしたら、たまったものではありません。

幸い、大学へは徒歩で通える範囲に住んでいたので通学に問題はありませんでしたが、電車に乗る必要がある飲み会や買い物などの用事を済ませることが非常に難しくなってしまいました。

 

そして、もっと苦しかったのがアルバイト。

バイト先までは電車に乗る必要があったので、頻繁に遅刻・欠勤をするようになってしまったのです。

 

さらに、大学の授業も非常に苦痛。

つい先ほど「通学には問題ない」と書きましたが、問題ないのはあくまで通学に関して。
そこから先は話が別です。

授業は、一旦始まってしまえば終わるまでおとなしく座っているべきもの。
この原則・社会通念が、予期不安を煽ります。

大教室で行なわれる授業で、後ろの方の席を取れれば目立たず抜け出すことができるので大丈夫なのですが、小教室での授業だともう無理。
一旦教室へ入ったら、あとは授業が終わる90分後まで抜け出すことができません。

トイレのフリをするにしても、一度が限界。
1授業で4回も5回もトイレに行く人もそういないでしょうし。。。

 

この他にも、細かいものまで挙げればいくらいでもあります。
キリがないのでやめときますが・・・

ただ堕ちていくだけで、何も進展しない日々

こうして、大学の授業もまともに出席できず、バイトもあまり行けずという状況へ追い込まれる僕。

「せっかく一人暮らししたのに結局留年してしまう・・・・」
「やばい・・・・ もうお金がない・・・・」

精神的にも金銭的にもどんどん追い詰められていきます。

 

周りに相談したところで、解決策なんて見つかるわけもない。
というか、変に気を使われたくない。

親に相談したって、おそらく信じてもらえない。
「サボってるだけ」「甘えてるだけ」と言われて終わり。
実際、甘えてるだけなのかもしれない。
気持ちが弱いだけなのかもしれない。

じゃあどうすればいいんだろう・・・
どうしよう・・・どうしよう・・・・・

 

・・・と、こんな一人自問自答を繰り返す日々。

いろいろ自分なりに頑張ってみるも、もはや万策尽きたという感じ。
お金はなくなってくる、大学からはどんどん足が遠のく、日々元気がなくなっていく、次第に誰とも会わなくなってくる・・・

しまいには、せいぜい彼女と週一回会うくらいで、後はほとんど誰とも喋らないような生活になっていました。

本来は、ワイワイと騒いだり喋ったりすることがやたらと好きな僕。
そんな僕が、「一週間誰とも会わずに家に籠もりきり」など、拷問に近いくらい辛いことなのです。
かといって、みんなで酒を飲みながら騒ぎたい、という気分にもなれず。

 

こんな状態がダラダラと続き、ついには頼みの綱である彼女とも徐々にうまくいかなくなり、連絡を取る回数も減っていきました。

待っていたのは、ただただ孤独な生活。

なんで自分がこんな目に・・・
そもそも、あんな発作が起こったからだ。
というか、あの発作はなんなんだ・・・・?
何かの病気なんだろうか・・・・?

こんな感じで悶々としながらもどうしたらいいかわからず、ひたすら不気味でした。
自分の体の中で何が起こっているのか全くわからないのです。

 

もちろん、いろいろな病気を疑ってみました。

すぐ動悸が始まるということは心臓に問題があるのか?
吐き気があるということは、胃の病気とか?
めまいや頭部の不快感もあるから、脳にトラブルを抱えていたり?

でも、今まで健康だったのがいきなりこんな同時多発的に病気になるなんてことあるのか・・・・?

こんな感じで、結局結論は出ず。

こうして、どうしたらいいのかわからず、ただ無為に、日々をなんとなく過ごすことを余儀なくされていたのです。

ついに病院へ!

そんな絶望的な日々がしばらく続いた後、ついに僕は一念発起し行動を起こすことにしました。

まだ若いのにこんなところで潰れたくはない!
自分でいろいろ解決策を模索して行動せねば!
・・・・・と自分を鼓舞して。

「早くそうすれば良かったのに」と思われるでしょう。
しかし、この頃は一番精神的に打ちのめされている時期でして、なかなか「解決に向けて積極的に動こう!」とか考えられる状態ではなかったのです。

 

この原因不明な症状に立ち向かうための第一の行動、それは病院へ行くこと。
やはりこれが基本。
ということで、勇気を出して病院へ行ってみることに。

「病院行くくらいで何を大げさな・・・・」と思われるかもしれませんが、今まで病院とは縁のない生活をしていたため、結構勇気が必要だったんですよね。。。

で、何科へ向かったかといいますと、、、

最初に訪れたのはなんと胃腸科。

実はこの頃、腸の具合があまりよろしくなく・・・・
なんだか常にズキズキと鈍い痛みがあるし、便秘や下痢を繰り返したりするしで大変だったのです。

今にして思えば、完全にストレスでやられていたのですが、ストレスがここまで体に影響を与えるとは思ってもいなかったんですよね。
この頃は、医学のことを全く知らなかったので。

ということで、まずは明確に現れている「お腹の不調」から治そうと思ったわけです。
腸の不具合を診てもらいつつ、そこであの発作についてもいろいろ医者に相談してみよう、と。

 

こうして、準引きこもり生活から約三ヶ月ほどが経った頃、ついに病院へ。
行ったのは、近所にある小さな胃腸科の病院。

診察の予約をして席につき、おとなしく待っていると、ほどなくしてお呼びがかかりました。

慣れない空間ゆえ、やや緊張気味に診察室へ入ると、そこには30代前半くらいの小太りでニコニコした医者が座っていました。
第一印象は、「あ、なんかホッとする感じの人だな」、これでした。

「どうもこんにちは。 今日はどうされました?」

優しく問いかけてくる医者。

「あの、ちょっと前からなんですけど、腸の具合がなんか悪くて。 便秘や下痢を繰り返してるし、常に下腹部あたりがズキズキと痛むんです。」

「なるほどぉ。」

このやりとりを皮切りに、いろいろと問診・触診する医者。
最終的には、「軽く腸が荒れているだけだろう」ということで、整腸剤を一週間ほど飲んで様子を見ることになりました。

そして診察の終わり際に、聞きたくて聞きたくて仕方が無かった疑問をぶつけます。

「あの、今回の腸のことと関係あるかわからないんですけど、なんか・・・・・ たまになんですけど、急に動悸とか吐き気とかめまいとか冷や汗とかが一気に襲ってくる死にそうなくらいの発作が起こるんですけど、これって何かの病気ですか?」

やや大きめな声で、まくしたてるように質問する僕。

医者なら何か答えを持っているかもしれない。
こんな期待感から、ちょっとアツくなっていたのかもしれません。

しかし、その医者の返答は僕の期待するものではなく、

「うーん・・・・ なんだろうねぇ? ちょっと思い当たらないけど・・・・」

というものでした。

まあ、医者といってもそれぞれ得意分野が違うので、胃腸科の先生に聞くことではないので当然の結果なのですが・・・

しかしそれでも、何かしら答えが得られるかもと期待していた僕からするとこの結果はやはり残念。
がっかりしながら病院を出ました。

「まあいいや。 とりあえずこの腸の不快感が治れば、何かが変わってくるかもしれない。 発作自体も、あれから起こってはいないし。」

ということで、まずは渡された整腸剤を飲み続けることに。

抗不安薬「デパス」との出会い

しかし一週間後、全く症状が回復せず。
慌てて、もう一度病院へと向かいます。

「先生、あの薬を言われたとおりに飲んでいたんですけど、全く効果がありませんでした。」

「うーん・・・・ そうかぁ。」

「はい、もっと強い薬とかありませんか?」

「強い薬・・・・ねぇ。 まあ、わかりました。 ちょっと思い当たる病気があるんで、薬を変えてみますね。」

「思い当たる病気・・・・・ですか?」

「うん。 とりあえず今日出す薬を一週間くらい飲んでみてくれる?」

こうして、胃腸科の医者から新たに薬を出され、「ホントにこれで治るのか?」と疑心暗鬼になりながらもそのまま帰宅しました。

 

その日の夜、貰った薬を寝る前に一錠飲んでみました。
そして翌朝にももう一錠。

しかし正直なところ、「飲んだ感じあまり変化がないんだけど、本当に効くの・・・?」とやや諦めムードが僕の中で漂ってました。

 

しかし、その日の夕方くらいのこと。
今までとは違う感じで、不意にトイレへ行きたくなったのです。

ここ数ヶ月は、下痢と便秘を繰り返すだけで、普通にトイレに行きたくなって普通に済ます、ということがほとんどありませんでした。
なのに、今日はなぜか非常に順調。
腸に不具合を感じる以前の、あの正常だった時の状態です。

 

それから数日、腸の不具合はピタリとなくなりました。
あれだけ不快だった症状が、ほとんどなくなってしまったのです。

これに思わず感激し、「一週間後にきてくれ」と言われていたのに、4日しか経っていない状況で病院へ行ってしまいました。
この嬉しい報告をするために。

「先生! 治りました! もらった薬を飲んだら、たった一日で治りましたよ! いやぁ、凄いですねあの整腸剤! あんなのがあるなら先に出してくださいよ~♪」

浮かれまくりです。
とりあえず一つ厄介なことが片付いた、という喜びを隠しきれません。

すると先生は、共に喜んでくれつつも、ちょっとシリアスな表情でこんなことを言い出しました。

「うん、そりゃ良かったね! やっぱりこの薬が効いたかぁ。 いや、実はね、それ整腸剤じゃないんだよね。」

「え・・・・・?」

「デパスっていってね、抗不安薬の一つなんだよ。」

「こうふあんやく・・・?」

「抗不安薬っていうのは、文字通り不安を和らげる薬で、睡眠薬としてもよく使われる薬だよ。 で、このデパスっていうのはベンゾジアゼピン系といって、比較的安全な種類の薬でうんたらかんたら・・・・・・」

ここから、医者による専門用語オンパレードな説明が開始されました。
今ならほとんど理解できるのですが、この頃はまだチンプンカンプン。

あまりに気持ち良さそうに喋っているので、この雰囲気を壊すのもなんだなぁ、と思って「なるほど」「へぇ~」「そうなんですか」といった言葉を駆使して話を合わせました。

 

そうです。
あの時渡された薬、あの薬こそが、その後長々とお世話になることになる「デパス」だったのです。

運命的な出会いでした。
この薬をここでもらったことにより、後々パニック障害という病気をつきとめ、いろいろな対策法を知ることになったのですから。

 

医者の話が一通り終わったところで、気になっていたことを聞いてみることにした僕。

「ところで先生、僕の病気って何だったんですか?」

「うん、多分『過敏性腸症候群』だね。」

「かびんせいちょうしょうこうぐん・・・・・・?」

「つまり、ストレスで腸が正常に動かなくなる病気のこと。 だから、ストレスを和らげる薬であるデパスが効いたんだよ。」

「なるほど・・・・・ あ、でしたら、以前ちょっとお話した発作のことって覚えてますか? 動悸とか吐き気とかがいきなりくる、っていう発作のことなんですけど。」

「ああ、何か言ってたね。」

「あの発作も、過敏性腸症候群のせいだったんですか?」

頼む、「そうだ」と言ってくれ!
僕は必死でそう願っていました。

そうすれば、原因不明な不気味な発作、という恐怖から逃れられる。
過敏性腸症候群さえ完治すれば、もうあんな発作を怖がることなどなくなる!

しかし・・・・・・

「いや、関係ないねぇ。 過敏性腸症候群はあくまで腸が正常に動かなくなるだけで、それ以上は何もないから。」

「そうですか・・・・・・ わかりました・・・・・・」

せっかく過敏性腸症候群がほぼ治ったのに、肝心の発作の原因がわからず意気消沈する僕。
一瞬、「これで全部解決か!?」と色めき立ってしまったため、ショックも大きかったです。

でもまあ、一応腸の不具合は治ったわけだし!と気持ちを入れ替え、元気よく病院を出て行きました。
もちろんカラ元気ですが。。。

 

結局この過敏性腸症候群は、発作の恐怖心によるストレスから発生した二次的病気。
つまり、根源となる発作の原因はまだ何一つわかっていないのです。

本当の問題はこれからでした。

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